1978年公開のアメリカ映画、「Zoom」は、一見すると平凡なサスペンスのように思えますが、その内容は観客を恐怖の渦に巻き込む、真の意味でサイコスリラーと言えるでしょう。
物語の舞台は、大都会の喧騒から逃れようとする一人の男、ジェームズ・ハリスの心の闇
ジェームズは、かつて有名カメラマンであったものの、ある事件をきっかけにキャリアを棒に振ってしまいます。その事件とは、彼の恋人でありモデルのキャロラインが、謎の連続殺人鬼によって殺害されたことでした。ジェームズは、キャロラインの死の原因を探り、犯人を捕まえようと心に誓い、孤独な日々を送っていました。
ある日、ジェームズの元に、キャロラインの友人から連絡が入ります。彼女は、キャロラインが殺害される前に、ある奇妙な男と接触していたことをジェームズに告げます。その男は、カメラマンとして活躍していた「ズーム」と呼ばれる男で、キャロラインには特別な魅力を感じていたようでした。
ジェームズは、「ズーム」の存在を知り、彼こそがキャロラインを殺害した犯人だと確信します。しかし、「ズーム」の正体を知るためには、彼の足取りを追う必要がありました。「ズーム」は常に影からキャロラインを見守っていたようで、ジェームズは彼の行動を解き明かすために、カメラを使って彼を追い始めます。
「ズーム」を演じたのは、当時人気急上昇中の若手俳優、マイケル・サラザン
サラザンは、その美貌と演技力で多くの女性ファンを獲得していましたが、「ズーム」という狂気じみた役柄を見事に演じ切り、彼のキャリアに新たな輝きを与えました。キャロラインを演じたのは、後にアカデミー賞を受賞する女優、ジェシカ・ランディです。彼女は、この映画で悲劇的な運命を背負った女性を繊細かつ力強く演じ、高い評価を得ました。
「ズーム」の真の魅力は、そのスリリングな展開と、観客を不安にさせる不穏な雰囲気
監督のジェームス・ダグラスは、「サイコ」や「めまい」などの古典的なサスペンス映画に影響を受けていることを明かしており、本作にもこれらの名作に通じる緊張感と心理描写が感じられます。特に、ジェームズの視点から「ズーム」を追うシーンは、観客の恐怖心を煽り、映画全体に不穏な空気を漂わせています。
映像技術の高さが際立つ「ズーム」
この映画の公開当時、カメラ技術は現在と比べて primitive でしたが、「ズーム」では、当時の最新技術を駆使して、鮮明で臨場感あふれる映像を作り上げています。特に、ジェームズが「ズーム」を追跡するシーンでは、カメラワークを巧みに使い、観客の視点を変化させながら、緊張感を高めています。
また、映画の音楽も、スリリングな雰囲気を高める重要な要素となっています。作曲は、当時多くの映画音楽を手掛け、アカデミー賞にもノミネートされたことで知られるジェリー・ゴールドスミスが担当しています。彼の音楽は、映画のストーリーに合わせて変化し、観客の感情を揺さぶります。
「ズーム」は、サスペンス映画好きはもちろん、心理スリラーに興味のある方にもおすすめの作品です。
この映画は、人間の心の闇と狂気に迫るだけでなく、愛と憎しみの複雑な関係も描いています。ラストシーンでは、衝撃的な展開が待ち受けているため、最後まで目が離せません。